ドイツ・ハンガリー・オーストリア(2)

2010年のことです。当時大学院でお世話になっていた先生(センセイとします)とこんな話をしていました。

センセイ「南蛮漆器が見たいか」
私「見たいです」
センセイ「じゃあ行こう」

ほんとにこんなノリでした。あっという間に話は決まり、8月も終わりにさしかかったころセンセイと大学院の仲間2名と私の計4名はドイツのフランクフルトの地を踏みました。なにせまだ大学院2年目のペーペーです。外国に行くだけだってわくわくするのですから調査研究となれば、なんだか急に大人になった様な気がします(大人の自覚が無いのが問題ですが)。フランクフルトは暑い時は暑いですが、8月末になると意外と肌寒い日もあったりします。たしか到着した日は最低気温が10度とかでした。猛暑酷暑の日本とは大違い。空気もカラッとしていて、思わず背伸びをしたくなる様な気持ちのよい気候です。私は友人に会うため先にイギリスに行っていたのでフランクフルトのICE(新幹線のようなもの)の中でメンバーと合流しました。珍道中の始まりです。

先生の第一声は、「ビール!」でした。センセイはとにかく良く飲みます。私も嫌いでないのでまんまとこの誘いに乗ります。ドイツはビールの国と名高い通り本当にビールが美味しい。空気が乾いているせいもあるのでしょう、ぐいぐい体が黄色い炭酸飲料を吸い込んでいきます。さて、陽気な4人衆がどこへ向かっているかと言いますと、フランクフルトから東へ2時間ほどの小さな町ゴータです。とてもきれいで、女子大生が3人で訪れたら「カワイー!」と連発しそうな、絵本の様な町です。そのカワイーゴータにいったい何があるかというと、お城があります。その名もフリーデン・シュタイン城。名前からしてかっこいいこのお城は17世紀に、ザクセン・ゴータ公国領主エルンスト1世の居城として作られたお城で、

エルンスト一世の息子アルベルトはイギリスのヴィクトリア女王と結婚したこともあったりして、小さな田舎町にありながらとても由緒正しい、立派なお城です。そして、このお城が何を隠そう漆器をいっぱい持っている、というわけです。

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ゴータに到着すると、「いい人」がにじみ出ている長身のドイツ人男性が待っていてくれました。「ヨウコソー」とやさしく日本語で挨拶をしてくれたこの男性はフックスさんといい、フリーデン・シュタイン城の博物館学芸員さんです。センセイの話によるとフックスさんは以前、東京に漆芸文化財の修復を学びに来ていたことがあって、センセイが面倒を見たのだとか。それ以来とても仲良しでフックスさんが日本に来ると美味いもんを食わせている、仲なのだそうです。そして、フックスは英語でフォックス、つまり狐という意味なので、彼はきつねさん、なのだそうです。ここは大事な項目のようで「フックスくんはねー、きつねくんなんだよ、わかるかい?」と道中5回くらい説明を受けました。ペーペーの私は「それ、もう聞きましたよ」と言う訳もなく、首を縦にふります。そんなやり取りをしたりしながら、到着した時間は夜も遅かったので、調査は翌日から、ということになりました。