1-1. 漆の木・漆の実

さて、「0. はじめに」で書いたように、漆は木の樹液です。漆を採ろうと思ったら、まずは漆の木を探さなくてはいけません。

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これが漆の木、正式名称もウルシノキ。ウルシ科の落葉高木で、秋になると葉が赤や黄色に染まります。原産はアジアで、日本にはもともとあったとも中国から渡来したとも聞きます。いずれにせよ縄文の時代から何千年ものあいだ、日本の野山に自生し、あるいは人の手によって育てられてきたことは間違いありません。

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幹の外皮は灰白色でごつごつしていますが、中身はとってもあざやかな黄色。木地や木材としてはあまり一般的ではないですが、寄木細工等に使われることもあります。

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このヤマブドウのようなものは、漆の実。乾かしてすりつぶすと蝋の成分が採れるため、昭和中期頃までは、ろうそくや化粧品の原料として使われていました。

いまではあまり目にすることのないウルシノキですが、藤沢周平の小説『漆の実のみのる国』等で描かれるように、かつては換金作物として日本各地で植栽されていました。江戸時代には各藩が競うようにして漆の生産に励んだという歴史があり、樹液も実も、ひとびとの生活を支える大事な資源だったことがわかります。