11月10日(日)教室:修復
秋が深まって参りました。というかもう寒いです。冬です。冬の空気は好きですが、寒いのは苦手。こたつか布団か温泉に包まれていてよいのであれば冬は大歓迎です。
と、そんなあまいことは言っていられません。今日も活動報告です。
さてさて、今日はこんなものからご覧にいれましょう。
これは、鏡台です。上に鏡が乗ります。変わり塗りの一種と言えるでしょうか、赤い漆で全体が塗られた所々に黒の模様が覗いています。せっかくのなので少しこの模様の造り方に触れておきましょう。
黒い模様は、赤の上に描かれている訳ではありません。手順としては先に黒い漆で模様を描いておきます。その上から全体に赤い漆を塗り、乾いてから全体を平滑に研ぎ出す。すると、赤い漆の下に描いておいた黒い漆の模様が研ぎ出されてくる、という仕組みです。ですから、仕上がりは真っ平らです。
今回はこの魅力的な鏡台をきれいに修復して復活させよう、という企画です。
まずは、汚れをきれいに掃除してしまいましょう。修理の基本はクリーニングです。手ぬぐいなどのように肌理の細かい綿布にわずかな水分を含ませて丁寧に拭いていきます。写真のように、みるみる汚れが取れていきます。汚れの除去に最も効果的なのは実は水です。適度な湿り気を与えて擦るといろんな汚れを絡めとってくれるのです。この適度な湿り気を専門用語で「シンシブ」と呼んでいます。由来も漢字もさっぱり分かりませんが、「シンシブで拭いて」などと普通に会話に登場します。
クリーニングが済んだら大きな凹みを刻苧で埋めておきましょう。金継の時と同様、刻苧は大事な修復材料です。盛り上がりすぎないように、木地の高さに合わせ丁寧につけていきます。ちなみに刻苧を埋める前に木地には生漆を染み込ませて(木地固め)あります。今日はここまで。
もうひとつは、お皿の塗り直し。これはめじろ会ではちょっと珍しい修復品です。
というのも、これ漆ではありません。ウレタンかなにか、漆とは別の塗料が塗ってありました。なので糸底(器の裏中央部分)の塗膜がぱっくりと剥がれてしまっていました。これは丁寧に取り除いて漆で塗り直してしまうことにしました。
漆は木地呂漆と朱合漆を混ぜて塗ってみました。漆は周りの塗膜よりは色が濃くなることが考えられます。できるだけ色が近くなるよう朱合漆を混ぜています。そして、できる限り薄く塗ります。どうなるか私も楽しみです。
今日は、寒さのせいかちょっと静かな一日でした。おやつもおやすみ。次回に乞うご期待です。