0. はじめに

joboji

浄法寺(じょうぼうじ)*1は岩手県北部、青森県との県境を有する二戸市にある、人口5,000名弱(2010年時点*2)の町。みどり深き山と安比川のせせらぎに囲まれたこの地で、国産漆の7割以上(2009年時点*3)が生産され、その技術が脈々と受け継がれています。

漆の生産、と聞いて、どんな光景を想像されるでしょうか。そもそも漆というものが何なのかをご存じのかたもそれほど多くはないかもしれません。かくいうわたしも、たった数年前まで、漆についてもっていた知識といえば、お椀や重箱、塗り箸につかわれる赤や黒の塗料、ということくらい。もちろん、それが何でできているか、あるいは、どのようにつくられてるのかなんて、考えたこともなかったように思います。

漆について学びはじめたわたしがいちばんに驚いたのは、漆がウルシノキという植物の樹液だということ。ウルシノキに傷をつけ、滲み出た樹液をすくって集め、精製加工したものが、塗りものなどに使われる漆になります。つまり、木を育てること、樹液を集めること、それを精製加工することが、漆をつくるためには必要なのです。「漆芸教室」のページでお伝えしているように、漆の器を完成させるまでにもけっこうな手間と時間がかかるのですが、その前の段階、素材としての漆ができるまでにも、たくさんの年月が費やされています。

自生している木から樹液を集めたり、樹液を精製加工せずに出荷したりすることもあるため、必ずしもすべての過程が産地で行われているとは限りませんが、この文章では、漆の生産というひとつながりのお話として、浄法寺でのさまざまな取り組み、漆にまつわるひとびとのいとなみについて、わたしの見聞きしてきたことをご紹介できればと思います。

不定期更新ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

 


*1 正確には旧・浄法寺町。2006年に旧・二戸市と合併し、新・二戸市となった(下図参照)。新・二戸市も漆の振興に力を入れているが、漆産地として言及される際は「浄法寺」の名が使われることが多いため、本文章内では「浄法寺」に呼称を統一する。
*2 平成22年国勢調査より。二戸市人口統計より旧・浄法寺町のみ抜粋。
*3 平成22年国勢調査より。

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